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福岡地方裁判所 昭和43年(ワ)1392号 判決 1971年10月28日

原告 株式会社福岡銀行

右訴訟代理人弁護士 佐藤安哉

被告 太平住宅株式会社

右訴訟代理人弁護士 鶴丸富男

主文

一、被告は原告に対し、金二二九万五、〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年四月六日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

三、この判決は仮に執行することができる。

事実

<全部省略>

理由

一、前記の原告の請求原因1の(一)の事実は、当事者間に争いがないところ、同事実によると、訴外会社は、被告に対し、昭和四三年四月五日の経過とともに被告から着手積立金二七〇万円と解約損害金との差額であることが計算上明らかである金二二九万五、〇〇〇円の返戻を受けることができる解約返戻金債権を有していたものと認めるのが相当である。

二、そして、<証拠>によると、訴外会社は、昭和四二年六月二九日ごろ、原告に対し、前記の訴外会社の被告に対する金二二九万五、〇〇〇円の解約返戻金債権を譲渡したこと、このように訴外会社が原告に対し右債権を譲渡し、原告が訴外会社から同債権を譲り受けるようになったのは、原告および訴外会社が、同債権を、これよりさき原告と訴外会社との間に成立していた原告を貸主とし、訴外会社を借主とする手形貸付等の手形取引契約にもとづく原告の訴外会社に対する債権の根担保の目的に供しようとしたためであって、右債権譲渡は、単に原告の訴外会社に対する債権取立の便宜をはかるための形式上のものにすぎないものではなくして、原告および訴外会社がいずれもその真意をもってなしたものであり、名実ともに兼ねそなえたものであったことを認めることができ、これを覆えすに足りる証拠はない。

三、さらに、そのうち公証人の作成部分については成立に争いがなく、被告福岡支店および同支店長関係の各印影がいずれも同支店の印章によって顕出されたものであることは当事者間に争いがないから、被告福岡支店作成部分についても<証拠>を総合すると、訴外会社担当職員および原告福岡支店担当行員は、昭和四二年六月二九日ごろ、前記債権譲渡後、被告福岡支店を訪れ、同支店総務課長訴外梶田勘司(もっとも、同訴外人が被告福岡支店総務課長であったことは、当事者間に争いがない。)に対し、「譲渡債権の表示①金額金弐百弐拾九万五千円也②契約名称月賦販売契約③契約番号、契約日福岡65,553昭和四〇年五月二〇日」「貴社(貴殿)に対する前記債権を今般都合により株式会社福岡銀行赤坂門支店に譲渡しましたから、ご承諾の上、上記代金は直接譲受人にお支払い下さいますようご通知かたがたご依頼申し上げます。」などと記載された譲渡人としての訴外会社および譲受人としての原告赤坂門支店連名の被告あて昭和四二年六月二九日付「債権譲渡承諾依頼書」と題する書面を差し出したところ、右梶田勘司は、同書面を手に取り、その内容に目を通したうえ、同書面上の「前記について承諾する」とある記載の下に、被告福岡支店の所在地、名称および支店長氏名をあらわすゴム印を、さらに同支店名の上に「太平住宅株式会社福岡支店之印」なる角印ならびに同支店長氏名の右側に「福岡支店長之印」なる丸印をそれぞれ押捺して、即時、前記原告福岡支店担当行員に対し、同書面を手交したこと、そして、同担当行員は、そのころ、同書面を原告福岡支店に持ち帰り、原告福岡支店では、同年七月五日、同書面につき、福岡法務局所属公証人平井進による同日付の確定日附を得たこと、および、被告福岡支店については、支店の登記がなされていることをそれぞれ認めることができ、これらを左右するに足りる証拠はない。

右各事実によると、前記債権譲渡の譲渡人である訴外会社は、昭和四二年六月二九日ごろ到達の書面で、その債務者である被告に対し、同債権譲渡の通知をなし、しかも、その通知は、確定日附のある証書をもってなされたものと認めるのが相当である。

四、もっとも<証拠>を総合すると、前記解約返戻金債権については、これを対象として、福岡地方裁判所において、いずれも債権者を訴外岩佐進、債務者を訴外会社、第三債務者を被告とそれぞれして、昭和四二年一一月二五日付債権差押及取立命令ならびに同年一二月四日付債権転付命令がなされ、同各命令は、いずれも、そのころ、訴外会社および被告に対して送達されたことを認めることができ、これを動かすに足りる証拠はない。しかし、訴外会社の原告に対する右債権譲渡の日ならびに訴外会社の被告に対する同債権譲渡通知到達の日がいずれも昭和四二年六月二九日ごろであり、かつ、その通知には同年七月五日の確定日附のある証書が存在すること、前記のとおりである以上、原告は、右債権の譲受をもって、同確定日附の日より後に発せられ、かつ送達された債権転付命令の債権者である前記岩佐進に対して対抗することができ、したがって、原告は、右岩佐進への同債権の帰属を否定し、被告に対し、同債権が原告に帰属していることを主張することができるものと解するのが相当である。

五、そうすると、被告は、原告に対し、前記金二二九万五、〇〇〇円およびこれに対する同じく前記の昭和四三年四月五日の翌日である同月六日以降支払済みにいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるものというべきであるから、被告に対し右各金員の支払を求める原告の本訴請求は、その余の点についての判断を省略して、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を、仮仮行の宣言につき同法第一九六条第一項、第四項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 桑原宗朝 裁判官 渡辺惺 浦野信一郎)

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